覚書

「鷹司、何故その犬を庇保するのだ」

 今にも斬りかかりそうな剣幕で兜は詰め寄る。相手は七十寸を超える大男だ。朝日もこの国では決して小さい方では無いが、この男から見れば蟻と見るのとさして変わらないのだろう。

 着物の袂で凪の身を隠す。

 ーー今日、下ろしたばかりなのに。

 彼女に付着した泥は男の着物を汚す。

 朝日にとっては着物が汚れることなどどうでも良かった。凪に対する誹謗を黙って聞くのであった。