覚書

 頬を染めながら外出する彼女を送迎する。食器片し、廊下を拭き掃除し、敷き布団を外に干した。
 緩やかに流れる秋の景色を縁側で楽しみながら麦茶を口にする。
 ーー昨夜、初めて凪を抱いた。
 失敗で終わっても仕方がないと考えながら、今までに無いほど気を遣って彼女に触れた。擽ったいかなと思いながらも進める愛撫。目尻に涙を溜め素直に感じる彼女が可愛すぎた。怖がって震える手に指を絡めて何度も時間をかけて愛を伝えた。
 気分も高まり、いよいよ中へお邪魔する。その身に豊穣の神を宿すからなのか、先端だけでも強烈な快楽が全身を駆け巡る。今まで抱いた女とは全く違う。根元まで挿れたとき思わず唸り声をあげてしまう。顔を歪める彼女を見て胸の内がキュっとする。急激にはね上がる心拍数と乱れ始める呼吸を凪に悟られないようにキツく抱き締めた。

「……取り乱しそうになったのは俺の方だぞ」
 昨夜の出来事を思い出しながら残った麦茶を一気に飲み干す。さて、買い物行くぞ。次の作業に向けて立ち上がる。
 今夜はどのように可愛がろうかと凪と過ごす夜について考える。上機嫌で口笛を鳴らし商店街へと向かった。
 ーー西の遠くの空に雨雲がかかっていることを彼はまだ気づいていない。

「あ、布団……」
 商店街で買い物を済ませた男はどしゃ降りの空を見て青ざめた。