覚書

 集合時間の二時間半前。何となくではあるが体のかったるさを感じてカフェイン入りの炭酸飲料水を買いに行こうと自動販売機へ向かう。

 商い処の前を通り過ぎれば見慣れた緑髪が商人と何かを話している。彼の元に誰かが小走りで向かっていった。後輩の凪だ。

 彼女に対しいつもと違う雰囲気を抱きながら物陰に身を隠して二人の様子を見守る。何をやっているんだか……。

「ん? 凪、髪切ったんだぞ?」

 にこりと笑みを浮かべ話したそうに中指と人差し指をだけ立てて胸元まで上げる。

 朝日は手のひらを彼女の前に出せば鷹司家で働く者しか伝わないやり取りが始まる。トントンと。手元が見える俺でも何を伝えたいのか理解できてしまう。

 

『あ』『る』『じ』『さ』『ま』『に』『さ』『い』『しょ』『に』『み』『て』『い』『た』『だ』『き』『た』『か』『つ』『た』『の』『で』


 どことなく、二人の周りが桃色のオーラに包まれているように見えた。

「可愛いじゃん!」

 似合っているぞと言いながら、親友は弾けるような笑みを浮かべて凪の頭を撫でる。俺は何を見せられているんだ!