覚書

 二人の関係は秘密裏で、こうして肩を寄せ合えるのも戌の刻(10時)を回った鷹司家のみだ。

 満天の星空の下。ゆっくりと流れる風(時)の中で、時間を共有し、心を満たしていく。

 器の中の醸造酒をクッと飲み干す。凪に触れる腕は腰元へ下がり、さらに朝日の元へ引き寄せる。

 瞬時、凪は硬直する。仄かに回り始めた酔いは醒め、我にかえるようにその腕を腰から離した。

「ーー……ごめん」

 咄嗟に出る謝罪の言葉。彼女は何も言わず首を横に振る。