覚書

 三階、清掃用具置き場の入り口前。

 廊下の窓を覗きこめば向かいの棟の様子を確認することができた。二階の窓ガラス前には見慣れた緑髪の男性がいる。

 主の後ろ姿のみ映りこんでいるが、凪の目には何やら緊迫した雰囲気を感じられた。

 彼の体の向きが変わった時、艶やかな装束に身を包む六花の姿を確認する。

 六花は朝日に詰め寄る。パッションカラーの魅惑的な唇は彼の顔に近づいていく。

「……っ」

 見ていられなくなりその場から駆け足で立ち去る。足音は向かいの一室にまで届き、朝日は音の方角へ慌てて振り替える。

「……凪!」

 凪は朝日の呼び掛けに応じなかった。


 ーー計算通り。

 女は妖艶に痛々しげな泥棒女(凪)を嘲笑う。