寝室を覗けば朝日は布団を被り、凪の様子を伺っている。凪は緊張のあまり一歩も動けなかった。
彼女の心境を察した朝日は小さく手招きする。大好きなヒトの要求に従順な凪は、遠慮がちに彼の傍へ行く。
手の届く範囲まで近づいた時、朝日は凪の腕を掴む。布団の中へ引きずり込み、逃がさないように腕の中に納めた。固くなった体から緊張が伝わる。薄い布越しに優しく背を擦る。
艶のある黒髪に顔を埋め、胸いっぱいになるまで息を吸う。雌の香りだ。頭頂部から足の先まで“凪”で支配される。正直すぎる体は欲情の熱が込みあがる。彼女に気づかれないように、そっと腰だけは距離をとる。
目を瞑る。自制の為、再会した“あの日”を思い出す。
惨めな行為を受けた彼女は痛々しく、別の男に抱かれた事実に心にモヤがかかる。腕の力を少しだけ強めた。神子となった彼女の力には及ばないかもしれない。それでも護りたいという感情に偽りは無かった。
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